国立駅・南口再開発の日経新聞記事を考察 アイキャッチ画像
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文教地区、国立駅でついに再開発が

国立 (くにたち)といえば、一橋大学があってきれいに整備された学園都市。こちらの記事で紹介したSUUMO の住みたい街2023首都圏版のランキングでは国立駅は125位 (2022年は103位)なので、「万人が住みたいと思える人気エリア」とまでは言えないのですが、閑静で知的な雰囲気のある高級住宅街です。

国立市の発展の要になったのが、国立駅。JR東日本の中央線の停車駅で、西武グループの創設者、堤 康次郎がトップを務めた箱根土地という会社が、この辺りを住宅地として大規模な開発をおこない、鉄道省に要請して1926年に国立駅を開設しました。東京商科大学 (今の一橋大学)の誘致に成功し、国立大学町として住宅地を売り出したのです。朝鮮戦争時に立川に駐屯した米軍の歓楽街となった国立は治安が悪化し、住民と学生が中心となり取り締まる運動がおこなわれ、1952年に東京都から文教地区として指定されました。(三才ブックス社「地図で読み解くJR中央線沿線」を参考)

その国立駅で、いよいよ再開発がおこなわれることになり、工事が進められています。

詳細は2月2日に国立市とJR東日本などが連盟で発表した下記のプレスリリース記事をお読みいただきたいのですが、JR東日本が所有する土地と、国立市が所有する土地を交換し、国立駅の南西に土地をJR が中心となって「(仮称)nonowa 国立 SOUTH」という商業棟と「(仮称)びゅうリエット国立」という住宅棟が開発されることに。

【国立市】国立市と JR 東日本が国立駅南口駅前の土地交換契約を締結 国立駅周辺の魅力あるまちづくりを連携して進めます (2023年2月2日)

こちらの記事で国立の大学通りの桜を紹介しましたが、そのときに撮影した写真がこちら。

国立駅南口の再開発の工事現場 (2023年3月27日撮影)
国立駅南口の再開発の工事現場 (2023年3月27日撮影)

日経新聞の地域面で国立の再開発が掲載、人口減にも触れる

日経新聞のオンラインでは5月18日(木)、紙面では5月19日(金)の朝刊の東京・首都圏経済のローカル面にこの国立駅の再開発について記事が掲載されました。

【日経新聞】東京・国立駅前、景観論争経てようやく開発 JR東日本 (2023年5月18日、紙面では19日朝刊)

この記事では、「都内の駅前再開発は分譲マンションが建設されがちだが、子育て世代を呼び込む狙いで賃貸とした。」とある他、国立の両隣の国分寺と立川について「近年、駅前開発が一気に進み新たな住民の流入で人口増につなげてきた。」とあります。

駅前開発の差は人口推移に表れている。国分寺市の23年の人口は12万8238人(1月1日時点)と11年連続で増加、立川市は18万5483人と9年連続で増加した。」と書いていて、一方で「国立市は7万6168人と2年連続で減少。14年と比べても、国分寺市が8.0%、立川市が4.1%増えたのに対し、国立市は2.4%増にとどまる。」と立川市、国分寺市、国立市の棒グラフ付きで説明がありました。

私は本業でデータサイエンス関連に携わっているので、データを見ると自分でも確認してみようと思うのですが、この記事で気になったのは、再開発の有無と人口増減の因果関係を語るなら、国立市周辺の他の市、府中市日野市小平市小金井市あたりのデータも出さないと説明が付かないような気がしました。特に、府中には駅前開発が最近あったばかりですよね。2017年4月に完成したマンション「プラウド府中ステーションアリーナ」と7月の商業施設「ル・シーニュ」の開業と、あと再開発とは厳密には違うのですが伊勢丹府中店の跡地に商業施設「ミッテン府中」が2021年6月に開業しています。

中央線沿いという括りで国分寺と立川だけに絞ったのかもしれませんが、国立市の隣にある市で再開発済みという条件も揃っているのに、府中市がデータに出てこないのはすごい違和感があるなと思って、自分でも調べてみることにしました。結果、再開発済みの府中市でもここ3年連続で人口が微減しているということが分かり、これを入れると再開発&人口増のストーリーがまとまらなくなったので省いたのかなという気もしてきました。

国立市の人口推移は

それではまず国立市の人口推移を見てみます。東京都の各市では毎月の人口データを公開していますが、とりあえず住民基本台帳を基にした1月1日時点の各年の人口データを使用してプロットしてみます。男女・日本人、外国人問わず、人口総数でのプロットです。

2018年から2023年の国立市の人口推移
2018年から2023年の国立市の人口推移

確かに2021年まで76,371人へと伸びていた人口が、2022年が76,317人、2023年が76,168と微減しています。

国立の近隣の市の人口推移と再開発の有無は?

一方で、国立の近隣の市の人口推移も過去6年分で見てみましょう。全て住民基本台帳の1月1日時点のデータを使って揃えています。2018年から2023年では小金井市国分寺市立川市が右肩上がりに増えていて、小平市が2022年は少し減っていますが、2023年でまた伸びています。一方で国立市府中市は2021年まで増えていますがそこから2023年まで連続で少し減っています。日野市は2022年まで187,304人へと伸びて2023年で187,254人とやや減らしています。

2018年から2023年の国立周辺の市の人口推移
2018年から2023年の国立周辺の市の人口推移

府中駅南口の再開発を2017年に完了した府中市

それぞれを細かく見ていくと、府中市は再開発のビル(プラウドとル・シーニュ)を含む「第一地区」が2017年7月に完了しています。2017年からの人口推移を見てみると、確かに2017年が258,000人、2018年が258,654人、2019年が260,011人と増えています。ただ、ここ3年は2021年が260,255人、2022年が260,253人、2023年が259,924人と少し減ってしまっています。

2017年から2023年の府中市の人口推移
2017年から2023年の府中市の人口推移

人口増減が再開発だけの理由では語れないのですが、再開発しても人口が増え続けるかどうかは保証できず、結局は街の魅力や住みやすさ、職場へのアクセスなどに依るのかなと感じました。

国分寺駅北口の再開発を2020年に完了した国分寺市

続いて国分寺市。長年の念願だった国分寺駅の北口の再開発がようやく実現し、2018年3月に2棟のタワーマンション「シティタワー国分寺ザ・ツイン」が完成し、4月にその低層階に市の施設のcocobunji プラザや伊勢丹系列の商業施設「ミーツ国分寺」が開業しました。さらに2020年3月に北口のロータリーが整備され、再開発は完了。

実は再開発前から増えている国分寺市の人口ですが、再開発後も順調に伸ばしています。2018年1月に 121,673人だったのが再開発ビル完成後の翌年は123,689人と2,000人近くも増えています。

2018年から2023年の国分寺市の人口推移
2018年から2023年の国分寺市の人口推移

武蔵小金井駅南口の再開発を2020年に完了した小金井市

同じく小金井市も、武蔵小金井駅南口地区市街地再開発事業として、南口第2地区の再開発が2020年6月に完成しました。2棟のタワーマンションである「プラウドタワー武蔵小金井クロス」のイーストとウエストができ、ショッピングセンター「SOCOLA武蔵小金井クロス」がオープンしました。

再開発の影響は大きく、2020年1月が122,306人だった市内の人口が2021年1月には123,828人に1,500人ほど増えています。

2018年から2023年の小金井市の人口推移
2018年から2023年の小金井市の人口推移

立川駅北口の再開発を2016年に完了した立川市

そして立川市は再開発を段階的におこなってきましたが、立川駅北口西地区第一種市街地再開発事業として立川タクロスが2016年7月に竣工し、8月にまちびらきをしています。2016年1月に179,796人だった人口は2023年に185,483人まで増えています。

2016年から2023年の立川市の人口推移
2016年から2023年の立川市の人口推移

再開発の影響ももちろんあるでしょうが、伊勢丹高島屋といった駅近くのデパートや駅ビルのルミネエキュートグランデュオと店が充実していて、巨大な国営・昭和記念公園も近くにあり、映画館などの商業施設もあります。新宿のような都心に行かなくても立川で買い物は事足りますし、ターミナル駅として中央線、南武線、青梅線、さらにモノレールもあるので、四方八方へと移動がしやすいです。

再開発をまだしていない小平市も人口増

これまでは再開発があった市について書いてきましたが、再開発をまだしていないのに人口が増えているのが小平市です。2021年1月の195,543人から、2022年1月は195,361とやや減ってしまいましたが2023年1月には196,924人と再び増加に転じています。

2018年から2023年の小平市の人口推移
2018年から2023年の小平市の人口推移

再開発の計画は2つあって、1つが「小川駅西口地区第一種市街地再開発事業」が2018年8月に都市計画決定、2026年5月に工事が竣工する予定です。小平市初のタワーマンションが建設されるということでネットでも話題になりました。もう1つは「小平駅北口地区第一種市街地再開発事業」。こちらは2024年6月に都市計画決定、2030年度に工事が竣工する予定です。

【小平駅北口地区市街地再開発準備組合】再開発構想・コンセプト

再開発をする前から人口増の小平市。市の公式でもプチ田舎をPR していますが、都心の喧騒から離れつつも、そこまで遠くない絶妙な立地で住みやすさと職場へのアクセス性が両立できるところですね。

国立の何を守り何を変えるのか

国立駅の再開発の新聞記事を読んで、自分で色々とデータを見て発見が多かったので長々と書いてしまいました。記事では国立市商工会の桂会長が「国立の何を守り何を変えるのか。選択と集中をして街づくりに取り組まないと人口は増えない」とコメントしていましたが、これからの国立の街づくりに期待しています。

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Last Updated on 5月 21, 2023

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