たまらん坂 (国立市側から撮影)

忌野清志郎さんで有名な「たまらん坂(多摩蘭坂)」

東京都道145号立川国分寺線は、立川市と国分寺市を結ぶ都道で、愛称は「多喜窪(たきくぼ)通り」。古代の多摩川が蛇行して地面を削り上げてできた崖のような地形「国分寺崖線(がいせん)」が南北を走るので、多喜窪通りは坂が多い道路です。

中でも有名なのが「たまらん坂 (多摩蘭坂)」。多摩蘭は当字で、地図ではひらがなの「たまらん」がよく使われていて、

ロックバンドRCサクセションのメンバー忌野 清志郎さんは東京の中野区出身で、育ちは国分寺市の富士本(国立駅の北のエリア)。たまらん坂付近で下宿もしていたという忌野さん。「多摩蘭坂」というタイトルの歌を1981年に発表したことで、この坂の名前が広く知られるようになりました。

「多摩蘭坂」の曲ではこのように歌われています。

言い忘れたことあるけれど

多摩蘭坂を登りきる手前の坂の

途中の家を借りて住んでる

RCサクセション「多摩蘭坂」の歌詞より

たまらん坂の地図がこちらですが、東西を貫くたまらん坂の途中に南北を走る坂もあります。

「たまらん」が由来とされるたまらん坂

たまらん坂の名前の由来は上の写真右側の標柱にある説明によると、

諸説もありますが、一橋大学の学生が「たまらん、たまらん」といって上ったとか、大八車やリヤカーをひく人が、「こんな坂いやだ、たまらん」といったことからこの名がついたと言われています。当字で「多摩蘭坂」とも書きます。

たまらん坂の標柱より

と書かれています。上るのがしんどいほどキツい坂というのが由来とされています。

なぜ一橋大の学生がわざわざ国分寺駅へ?

ただ、これだけだと疑問に思いませんか?

国立(くにたち)駅の南、たった数百mのところにある一橋大学の学生が、なぜ国立駅から3km以上も東にある国分寺駅への道を歩き、たまらん坂を上ったのかということです。

時系列で整理すると、国立駅の開業は1926年4月。そして、四谷にあった東京高等音楽学院(現・国立音楽大学)が国立に移転したのが1926年11月。さらに関東大震災の被災で神田の一ツ橋にあった校舎が倒壊したのを機に東京商科大学(現・一橋大学)が国立へ移転したのが1927年。

これだけを見ると国立音大や一橋大の学生さんが最初から国立駅を使えていますよね。なぜ途中にたまらん坂がある国分寺駅のほうまで行かないといけなかったのかがまだ分かりません。

その謎は、地元の歴史を調べることでようやく分かりました。国分寺市教育委員会が発行している「ふるさと 国分寺のあゆみ」にこのようなことが書いてあります。

新設された国立駅はといいますと、「旅客列車は一分間停車」ということになっていましたが、あまりにも乗降客が少なく、ついに列車の停車は取りやめになってしまいました。

これで困ったのが (中略) 東京高等音楽学院(現国立音楽大学)の人々です。何せ列車は国立に止まりませんから、学院の女子学生は国分寺駅からドロンコ道を五キロも歩くはめになってしまったのです。

学院側は、何度も鉄道省へ陳情に出向きましたが、受け入れられず、1929年6月、立川まで電車が開通するまで待たなければなりませんでした。

この間、音楽学院や商科大学の人々の苦労は並大抵ではなかったようで、多摩蘭坂の名の由来として語り継がれています。

国分寺市教育委員会発行「ふるさと 国分寺のあゆみ」の「変貌する村」より

私自身はこの説明の裏付けはできていませんが、上記が全て正しいとみなすと、国立駅はあったものの、電車(今のJR中央線)が国立駅に停車しなくなってしまったため、わざわざ国分寺駅まで歩いて通っていた、ということになりますね。今の多喜窪通りは細いとはいえ、車道と歩道が分離されていて、舗装もされているので泥んこになることはないですが、1927年頃から1929年までは歩くのも大変だった道だったというわけですね。国分寺駅から国立駅まで私も先程歩いてみましたが、多喜窪通りを真っ直ぐ進み東二丁目の交差点を北西に行き、トータルで4kmほどで約45分掛かりました。その途中で出てくる坂は確かにたまらんですな。

ちなみに「ふるさと 国分寺のあゆみ」は国分寺市役所や、お鷹の道にある武蔵国分寺跡資料館(公式HP)で購入できます。資料館についてはこちらの記事で紹介しています。

実際にどれぐらい「たまらん」か

さて、この「たまらん坂」は意外に名前のほどキツくは無いんです。

先程、スマートウォッチ(Apple Watch)をした状態でワークアウトをおこない、GPS情報を取得してきました。地図にプロットしてみると、たまらん坂の標高は下が72mほどで、頂上が84m弱。高低差は11mでした。

GPS測定なので多少の誤差はありますが、私の計算だと水平272m、垂直11mで勾配も4%ほど。角度にしても2.3度ほど。ふもとのほう100mぐらいを取り除いて水平150m、垂直10mで計算しても角度は3.8度。名前ほどキツい坂ではないんです。

Apple Watchのワークアウトを使って測定した「たまらん坂」の標高
Apple Watchのワークアウトを使って測定した「たまらん坂」の標高

多喜窪通りを東に行ったところにある武蔵野線の高架上の陸橋 (交差点「泉町三丁目」から「泉町」まで)や、国分寺駅に近い交差点「泉町一丁目」から「南町三丁目」までの坂のほうが長いですし体感的にはキツイです。

今日はたまらん坂について紹介しました。ではでは。

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Last Updated on 1月 23, 2022

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